続・精神科医の坂本です。
精神科医の坂本です。
さて、本日は、前回の続きで、得られた「エビデンス」に対して、医療はどのように向かい合うかといったことについて簡単に触れようと思います。
今回、お話しするキーワードは「バイアス」という言葉です。
簡単に言うと、情報を正確に読み取ることを阻害する先入観だったり、情報材料の偏りなどを指します。
例えば、「選択バイアス」と言って、同じ試験でも対象者が大病院の患者様か地域のクリニックの患者様かで得られるエビデンスに差異が出たりします。賛否ありそうですが、ある薬剤の効果を調べるいくつかの試験では、その薬剤を作っている会社がスポンサーになっている試験は「薬剤効果あり」のエビデンスが得られますが、スポンサーなしの試験では「薬剤効果なし」のエビデンスが出ることはまあよくあることだったりします。
一方で「エビデンス」を読み取る側も注意が必要です。
古代ローマのカエサル曰く「人は見たいものしか見ない」という言葉があります。無意識に自分の中で「こうあってほしい」「原理上こうなるはずだ」という思いで、情報を読むと、自身の意に沿う結果が出ている論文やエビデンスばかり取り入れてしまって、読み取る結果が歪むことがあります。
こうした「バイアス」に注意しながら、エビデンスを取得し、患者様の治療に役立てることが肝要ですが、なかなかこれが難しいんですよね・・・。
精神科診療部長 坂本 成映