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精神科コラム

自閉スペクトラム症について

 発達障害という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。生まれつきの言葉の発達の遅れがあったり、対人関係をうまく築くことができなかったり、落ち着きがない、集団行動が苦手といった症状が現れる精神障害の総称です。具体的には自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害などがあります。今回は自閉スペクトラム症についてお話ししたいと思います。

 

 自閉スペクトラム症とは簡単にいうと

・人付き合いでその場その場での臨機応変さが求められる対人関係が苦手

・特定の物事に強いこだわりや狭くて深い興味があること

といった特性によって日常生活で自分もしくは周囲が困っている状態をいいます。

 

 典型的な自閉症は幼少期に言葉の遅れや視線の合わなさなどで親や乳幼児健診などで気づかれることが多いですが、それらの症状がそれほど目立たないが、上記で述べたような特性があり、学童期、思春期、あるいは成人してから 生活に支障が出てきて医療機関での診察などで判明することがあります。ちなみにスペクトラムというのは「連続体」という意味で、「ひとつながりのものである」ということです。

 

 自閉スペクトラム症の方はその人をとりまく周囲とうまく折り合うことが難しく、慢性的な不適応状態が続いて、精神的・身体的な問題が生じることがしばしば見られ、それを自閉スペクトラム症から派生した二次障害といい、うつ病や不安症、強迫症、適応障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害などを併発することがあります。

 

 自閉スペクトラム症の特性は生まれつきのもので治療で改善するものではありません。その上で上記の二次障害を改善したり、未然に予防したり、あるいは過度なストレスを抱えずに本人にとってよりよい生活を送れるような支援方法については次回お話ししたいと思います。

 

参考文献:大島郁葉編:事例でわかる思春期・おとなの自閉スペクトラム症. 金剛出版, 2019

 

 

精神保健指定医 田中 大三