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精神科コラム

知能の不思議:サヴァン症候群

 サヴァン症候群を知っていますか?

 

 生まれつき精神障害・知的障害を持つ人に見られる、ごく限られた分野における特別に優れた能力のことです。1887年に、イギリス人のJ・ラングドン・ダウン博士により「イディオ・サヴァン(天才的白痴)」と名付けられ、後に「idiot(白痴)」が差別的な意味を持つことから「サヴァン症候群(savant syndrome)」と呼ばれるようになりました。Savantとはもともとフランス語で天才・賢人などの意味です。

 

 1988年公開の映画『レインマン』を観た人も多いと思います。ダスティン・ホフマン演じるサヴァン症候群の兄レイモンドと、トム・クルーズが演じたずる賢い弟チャーリーが旅をしながら、次第にお互いを理解し信頼しあうようになっていく物語がとても感動的でした。映画の中では、ダスティン・ホフマンの驚異的な記憶力が見事に描かれていました。

 

 記憶力の他にもサヴァン症候群の特殊な能力には、過去や未来のある日にちの曜日をすぐ当てられる、一度聞いただけの曲を最後まで間違えずに弾ける、航空写真を一瞬見ただけで描き起こせる等があります。

 

 一般的に男性に多く、また自閉症スペクトラム障害の人に多いと言われています。サヴァン症候群についてはまだ解明すべき点が多く残されていますが、現在では、左脳の損傷によるという説が有力視されています。

 

 近年、目覚ましい勢いで科学が進歩し、知能についても多くの研究がなされていますが、サヴァン症候群のようにまだまだ多くの謎があります。逆に言えば、我々の知能の可能性はそれ程大きいものなのです。

 

 

副院長 梅野一男