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精神科コラム

自閉スペクトラム症について2

 前回は自閉スペクトラム症の特徴と二次障害についてお話ししました。今回は自閉スペクトラム症の特性をもつ方の二次障害を予防したり、あるいは過度なストレスを抱えずに本人にとってよりよい生活を送れるような支援方法について解説します。

 

 前回スペクトラムと説明しましたが、自閉スペクトラム症の方それぞれに少しずつ違った特性があり、強みの側面と弱みの側面があります。これは自閉スペクトラム症の方に限らず、わたしたち人間みなそうだと思います。この特性を認知面(物事をどうとらえるか)、行動面(言葉や態度)、感覚(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚など)に分けて、具体的に見ていく必要があります。この作業は医療機関などで医師や心理士などの専門家の協力を得て行っていくのが望ましいです。そこで行われる知能検査やその他の心理検査も上記の特性を明らかにする一助となります。

 

 基本的には弱みを克服するというのは難しいとされており、弱みの側面は周囲の方に協力してもらったりして、それよりも強みの側面をこれまで以上に伸ばしたり、活かしたりし、弱みの側面を使わざるを得なくなる機会が少ない環境に身を置くことがよいとされています。

 

 以上の基本事項をおさえて日常生活を送りつつ、定期的に専門家との対話を重ねながら、最初は親や養育者、支援者がコーチのような立ち位置で本人を手助けすることから始め、次第に本人自身がコーピングスキル(困ったことへの対処技能)を身に着けていったり、周囲の方を味方につけていくような生き方ができれば理想的だと思います。

 

 最後に、二次障害の治療に関しては上記の自閉スペクトラム症の方一人ひとりの特性を踏まえた上で、うつ病や不安症、強迫症、適応障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害などそれぞれに対する専門家による治療を必要としますが、紙面の都合上、詳細は割愛させていただきます。精神科コラムの別の項目に載っているものもありますので、参考にしていただければと思います。

 

参考文献:大島郁葉編:事例でわかる思春期・おとなの自閉スペクトラム症. 金剛出版, 2019

 

 

精神保健指定医 田中 大三