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精神科コラム

子どもと家族 〜 その2

 60代の女性からメールで相談がありました。30代の娘さんが急に怒りだしてLINEを送ってきたと言います。

 

 「あなたのお母さんがあなたに暴力をふるうのは、おばあちゃんが原因だから、ごめんね」と、孫たちに謝って欲しいと。

 そして娘さん自身がしょっちゅう親に叱られて殴られたこと、ゲームも漫画も禁止されたことなどを訴えてくるのだそうです。

 

 彼女は「可愛がられた事は記憶に残らず、叱られた事ばかり記憶に残る」と困っているようでした。

 

 娘さんとしては子どもに暴力を振るう自分を許せない、けれど謝る気持ちにもなれず、それが苦しい。

娘さん自身、暴力を振るわれて泣いている子どもの悲しみが痛いほどわかる。

それはかつての自分自身でもあるから。そして親が自分に謝れないのと同じように、自分も子どもに謝れない。

 

『親が自分に謝ってくれれば、自分も子どもに謝れるかも知れない』と、感じているのではないでしょうか。

 

 私が彼女にそう説明したところ返信が返って来ました。

 

「私も父から暴力を振るわれて育ちました。そして女は大学には行かせないと言われ、認知症になったら一番に私の事を忘れてしまいました。結局私って何だったんだろうと思います。娘に色々書いては消し、結局何も送っていません。興奮している時は何を言っても私の気持ちは届かないと思うのでちょっと距離を置いています」

 

 「世代間伝達」はなかなか断ち切れませんから、私としても「ちょっと距離を置いて」みることにしました。

 

 

精神保健指定医  豊福 正人