「引きこもり」について その2
いじめや不登校、職場での人間関係などがきっかけで引きこもりになる事が多く、周囲の人々との関わりの失敗が大きな要因になっています。しかも青年期から50〜60代まで長期に渡るケースも多く、彼ら、彼女らは心理的に自立する以前に極端に自尊感情を傷つけられ、強い対人不安感のために家族以外の他者と関わることができません。或いは自室に閉じこもったまま家族とさえ関わる事を拒む人たちも少なくありません。
引きこもりが長期化するうちに、様々な精神的不調や障害を持つようになっても、自ら医療機関を受診する事は滅多にありません。社会と関わる機会のないまま両親が高齢化し、共倒れ状態になったのがいわゆる「8050問題」ですが、「引きこもり」はもはや個々人の生き方の問題ではなく、社会病理として認識せざるを得なくなっているのです。増加し続ける「不登校」と同様、私たちの社会全体の不具合が、人々の精神的健康を蝕んでいると考えるべきでしょう。
ちなみに2025年5月発表のユニセフの調査によると、日本の子どもの幸福度は先進36カ国中14位ですが、身体的健康では1位、精神的幸福度は32位と低く、いじめ、自殺が多いのも特徴です。。
精神保健指定医 豊福 正人