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精神科コラム

精神科医としての驚き、気づき、反省

 精神科医として40年近い時間が過ぎました。いろいろな精神疾患の方と長い時間を共有できたおかげで、時折自分の認識の甘さ、偏見に気づかされ、はっとする事があります。

 

 Aさんは典型的な統合失調症の患者さんです。50歳を過ぎ何とか一人暮らしが可能です。慢性期の症状、感情の平板化・思考障害・意欲低下などが持続していました。

 Aさんのような患者さんは、生活の多くに援助が必要で、自発的な行動の改善は困難と思われがちです。私もAさんの診察時には、薬の内服、睡眠、食事などの最低限のことのみ確認していました。

 

 ところが、ある日の外来診察で、Aさんに「テレビは観ますか?」と質問すると、「昨晩NHKでナチスドイツのUボート(潜水艦)の話を観た」と言われました。

 

 本当に雷に打たれた思いがしました。私も同じ番組を見ていたのです。かなりマニアックな番組で、私は歴史好きなので、この手の番組を良く観ていたのですが、あまり観る人は多くないジャンルです。診察の終わりに、「歴史が好きです」と言ってAさんは帰りました。

 

 慢性期の統合失調症の患者さんと、ひとくくりにして、食事・睡眠・薬等の話ばかりしていた自分がとても恥ずかしくなりました。

 

 

副院長 梅野 一男