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精神科コラム

心気症について2

前回、心気症(しんきしょう)についての概略を説明しました。

もう少し詳しく分類すると、

①疾病固執型(重篤、進行性あるいは致命的な病気に罹患している可能性についてのとらわれや恐怖が持続する)

②自律神経症状型(めまい、耳鳴り、倦怠感、冷や汗、動悸、激しい血圧変動などの症状が出現する)

③多訴型(患者さんが繰り返し執拗に自身の症状などを訴える)

④疼痛型(痛みを訴える)

に分類されます。それらが複数にまたがる場合もあります。

 

 また、心気症には以下の6つの要素があると考えられます。

①身体的違和感の存在 ②この違和感へのとらわれ

③重大な病気ではないかと恐怖感

④この身体的違和感と重大な病気への恐怖感を身近な人々に訴え続ける

⑤病気ではないとする医師の保証があっても、明らかに存在する自分の苦痛体験により患者さんは医師の見解を受け入れられない

⑥身近な人々や医師にさえも自分の苦痛が受け止められていないという孤独感や孤立感を抱く。

 治療者としてはこれらの重層的な苦痛を理解しておかなければ、ただ患者さんを否定し苦しめる存在でしかなくなってしまいます。

 

 心気症の患者さんは自分では身体の病気と強く思い込んでいるため、精神科への受診や精神科での治療に抵抗することが一般的です。そのため、まずは患者さんの自尊心に配慮した共感的治療構造を構築しようとするのが不可欠となります。

 

 また、通常、心気症の患者さんは精神科医の診療を受ける以前に、身体的精査を受けて疾患の存在を否定されているわけですが、特に診断が容易ではない神経変性疾患、内分泌疾患(ホルモンの異常など)、膠原病、腫瘍性疾患などが潜んでいることもあるため、治療者側も心気症と決めつけるのではなく、もしかしたら、上記のような疾患を頭の片隅に置いて診療を進めていくことも重要です。

 

(参考文献:三村將編:講座 精神疾患の臨床3 不安または恐怖関連症群 強迫症 ストレス関連疾患 パーソナリティ症. 中山書店, 2021)

 

 

精神保健指定医 田中 大三