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精神科コラム

子どもと家族 〜 その1

 2023年の日本の合計特殊出生率は世界227カ国中215位と、先進国の中でも著しく少子化が進んでいます。

 

 その原因は単純ではありませんが、結婚も子育ても「面倒」、「負担になる」と考える男女の若者が増えています。経済的負担だけでなく、一人暮らしの気楽さに慣れてしまうと、余計な人間関係を作るのが煩わしくなるのだと彼らは言います。親からの虐待、学校でのイジメ、不登校、引きこもり等の経験をもつ若者ではその傾向が顕著ですが、家族、親子、友人、人間関係そのものに喜びや豊かさ、希望が持てなくなっているのかも知れません。

 

 ユニセフが2020年に公表した報告書によると、日本の子どもの身体的健康度は 1 位でありながら、精神的幸福度は38カ国中37位とほぼ最下位となっています。少子化と子どもの幸福度は密接に関係しているように思われるのです。

 

 精神科診療で、生まれた時からの家族関係や生育歴を詳しく聴取するのは、その人の人格形成や現在の症状に関わる情報が、そこに多く含まれているからです。どんな親に育てられどんな家族に囲まれて、自分を肯定したり否定したりしてきたのか。自我が確立されるまで、自身ではコントロールできない感情や思考がどんな環境下で形成されてきたのか。それを洞察することは治療者にも患者さん本人にも大きな発見をもたらします。(次回につづく)

 

 

精神保健指定医  豊福 正人